心電図の計測で商用交流雑音対策に用いられるのはどれか。2つ選べ。
a: 移動平均処理
b: 加算平均処理
c: 差動増幅器
d: ハムフィルタ
e: ACラインフィルタ
商用交流電源由来の雑音は、臨床現場では最も多いME機器の雑音障害である。そ の影響は、大別すると計測機器やモニタに混入して波形や計測値を変形させる計測・モニタ障害と、機器の動作機構への作用による誤動作である。また、その原因は、単なる商用交流電源からの誘導による「ハム雑音」から、「電源リップル」およびそれによって変調された高周波が整流されて生まれる「整流低周波雑音」、電源ラインに乗った伝導雑音の1つの「パルス性雑音」、電源波形の歪みに起因する「高調波雑音」など多彩である。また、EMC問題とは若干性 格を異にするが、電源電圧変動も広い意味での商用交流電源由来の雑音とも言える。
a:移動平均処理は、時間に伴って観測される(時系列データ)データの季節変動や誤差変動をスムージング(平滑化)するため、前後のいくつかのデータの平均の系列データに変換すること。 または、変換した系列データのことである。
b:加算平均心電図法は、心電波形を加算処理することにより筋電位や外部ノイズを減少させ、従来の心電図では記録不可能であったノイズレベルよりも小さいμV単位の微小電位を体表面から記録することが可能である。代表的な心臓微小電位として、ヒス束電位・心房遅延電位・心室遅延電位などがある。
c:正解。差動増幅回路が用いられているのは、弁別比を向上するためである。 同相除去比(CMRR)を大きくとることができ、心電図(逆相信号)に重畳しているハム(同相信号)を抑制する特性がある。JISでは弁別比は1000以上(60dB以上)となっている。
d:正解。ハムフィルタは商用電源周波数(50Hzまたは60Hz)を中心とした帯域遮断(バンドカット)フィルタであるから、心電図の主な周 波数成分(0.05Hz~200Hz)のうちフィルタ部分の成分が減衰するためにひずみが起こる。
e:ACラインフィルタはAC電源を機器に引き込む入口に実装しノイズの出入りを防止するフィルタである。